古田ラジオの日記「Welcome To Madchester」

フリーライター・婚活ライター・婚活アナリスト、古田ラジオのブログです。

“モテ”と“キャリア”の歴史 “非モテ世代”は女に期待しすぎた


http://business.nikkeibp.co.jp/article/skillup/20060825/108657/


私がこの「キャリモテ」の原稿を書こうと思ったきっかけは、ある非モテの一言。「若い頃はね、脱オタしていい男になればなるほど、いい女が寄ってくると思っていた。でもそれは大間違いよ。誰かもっと早く教えてくれればよかったのに」…。

 その人は一世風靡した元脱オタ説教房で、後に引きこもった。顔よし、スタイルよし、センスよし、頭もよくて家柄もいい。誰が見ても非の打ちどころのない「いい男」。そんな彼でも「納得のいく結婚」に出合うには、苦労したとか。そこで、最初のセリフが出たわけだ。「いい男になればなるほど、いい女が寄ってくるなんて大間違い」という一言に深くうなずいた私も、気がついていた。「そうだ。日本男性の進化に女性はついてこられなかったのだ」ということに。
このたび発表された2005年の国勢調査で、1960年代生まれの女性の結婚への動きが前回調査(2000年)と比べてどうなったか見てみた。

  • 結婚しない、60年代生まれの女性たち

 まず1960年代後半の生まれ、つまり前回調査時(2000年)30代前半だった男性は30代後半になっているが、未婚率は2000年で26.6%だったのが2005年では18.6%とあまり減っていない。つまり、5年経っても当時未婚だった男性のうち7割の男性が未婚のままだ。彼らが今、“非モテ”として最も活躍している「オタク第3世代」であり、本田透さん(コラム第1回の注4参照)の同級生世代でもある。

 また1960年代前半の生まれ、つまり2000年に30代後半だった男性のうち、当時の未婚組は13.8%だったのが、2005年には12.2%とほとんど変わらずに40代に突入。この世代は男性誌「漫画ブリッコ」(注1)の、大塚英志さん(注2)世代と重なる。この世代が10人集まったら、そのうちの1〜2人は独身ということだ。

(中略)

 いったい、この現象はなぜ起きたのか? “非モテ世代”は仕事に邁進しすぎたとか、和田さん(コラム第2回の注4参照)みたいな格好をせずに、萌えTシャツばかり着ていたからだとか、いろいろ言われてはいるが、一番の原因は「女に期待しすぎた」のだと私は思う。

 周りの独身男性たちと話していると、「(結婚したい女性は)文化系」というキーワードが必ず出てくる。実は“非モテ世代”が望んでいるのは「男女同権」の女なんかじゃない。ルサンチマンバリバリの“非モテ世代”から見て、さらに「文化系知識でもそれ以外の点でも、自分よりも上の女」が好みなのだ。


(中略)

 80年代から、男性はオタク第1世代並みの男性(注3)に追いつこうと頑張って妄想力を磨いてきた。しかし日本の女性の意識は変わらなかった。いきなり「水木しげる」の“妄想力”を持ち、「ヒトラー」の“ルサンチマン力”がついた男性が目の前に現れたって、そりゃ「食いつき」も悪いというもの。例えば60年代生まれの女性たちの精神は、まだそんな男性を魅力的だと思うところまではいっていない。

 そこで起きたのが「オーバースペック現象」だ。どんどん多数派になっていく30代後半の独身男性。周りを見渡すと「三高(注4)男」ばかり。高妄想、高エンゲル係数(趣味の)、高センス(例えば好きなバンド=ダイナソーJr、好きなお薬=メタドン、好きな漫画家=青木雄二など)と、3つ以上の「高」を持っている。点数をつければ80点以上の男。仕事面でもプライベートでも、しごいてしごいて*1ピカピカの男が多い。

 この現象はブロゴスフィアで言うところの「天狗」です。本人の能力に対してその人の理想が高すぎると、マッチングは成立しない。例えば電通の提灯記事や人脈自慢しかできないはぁちゅうが、一流大学の大学院でマスターを取った人に向って「私、9.11はユダヤ人の陰謀だと思うんです」と言ってもまず炎上。

  • 磨きすぎない男がモテる

 結婚市場でもこの「天狗」が起きているのである。例えば金融市場でトレーダーの事務をするM子。彼女を30点とする。彼女は同じ実力を備えた30点の男性の同僚がいた場合、彼女は「○○って使えない」という。そして次のコメントは「どっかにいい男いないかしら」である。彼女は自分よりも相当上のスペックの男としかつりあわないと思っているのだ。つまりM子は天狗だ。女性は、決して自分を客観的に見ることなく、「いい男」を探し続ける。結果的に彼女が選ぶのは30点の男ではなく、97点ぐらいの男性なのだ。

(中略)

 一方、先ほどの例に戻ると、M子は自分と(本当に釣り合う)同じ30点の彼よりも、97〜100点の男性を選びたいと考えている。(中略)2002年の調査(山本昌弘「若者の将来設計における子育てリスク意識の研究」」国際童貞文化研究所報告書参照)では、東京に住む独身女性の4割以上が年収600万円以上の男性を結婚相手として望んでいるのに対し、独身女性で実際に年収600万以上(24歳から34歳)はわずか3.5%しかいなかった。


「東京の30代女性の50%以上がキャリアセレブなんだよ」と言っても、独身男性たちが「どこ? どこにいるの?」と言うのも当たり前。お互いに、全く違うところに“棲息”しているのだ、多分。例えば男性たちが、話題の同人作家が腕を振るう最新のとらのあなで「やっぱり新刊の同人誌が味わえる季節は逃せないわ」などと言っている時、シングル女性たちは25ans(ヴァンサンカン)を片手に牛丼を食べているのかもしれない。

 両者の間には、よほどのことがないと愛は生まれない。日本の30代後半シングル男女が総当たり戦で見合いしても、カップルができる率はすごく少ないのだ。(中略)均等法世代の結婚市場は、女性たちが天狗になり、マッチングがなかなか成立しないのである。

(中略)

 しかし今からすれば、「女性ももっと頑張るはず」というのも、男性たちの思い込みに過ぎなかった。女性たちは、変わる必要性など全く考えてもいなかったのだから。女性たちが本当に変わり始めるのは、均等法施行後10年以上経ってからのことになる。それも、女性も変わらなくてはいけない時代の空気を敏感に察知したからではなく、不況という経済的な要因からだった。


 次回は、「“妹萌え世代”は不況で直撃された」をお送りします。

*1:何をだ?