古田ラジオの日記「Welcome To Madchester」

フリーライター・婚活ライター・婚活アナリスト、古田ラジオのブログです。

はてな村博物誌7「ブロガーの衝突とネットの終わり」

天は何も語らず歴史をして語らしむ*1


かつてこの世界では2つの世界がありました。それは、「リアル」と「ネット」です。
リアルはリアル、ネットはネット、この二つは全く別のものであるとされており、それは明確に区別されていました。そのさまをウィンストン・チャーチル(現役女子高生ブロガー)は、「神保町の小学館から潮留の電通まで東京を横切る鉄のカーテンが降ろされた。「SPA!」及び「宣伝会議」の歴史あるライターは、すべてその向こうにある。」と評しました(フルトン演説)。これは有史始まって以来ずっと続いてきた事です。


そのうち、「ネット」側が繁栄を謳歌し始めます。いわく「テキストサイト」、いわく「Web2.0」などなど・・・インターネットが一般家庭にも普及しすでに「リアル」側が「ネット」を全く無視する事はできなくなりました。マスコミ業界に限らず、「ネット」で実績を作り「リアル」側に進出するような人もちらほら現れます。「リアル」の一番の権威ある存在であるところの新聞社からして「リアル」での配布をやめ、「ネット」での配信のみを行う事にした会社すらあるそうです。これをみてフランシス・モチオというシリコンバレー出身の国際政治学者は「最終的に「ネット」とWeb2.0ロングテールが「リアル」に勝利し、社会の自由と安定を無期限に維持する」という仮説を立てました。これは「ネットの終わり論」として各所で大変大きな反響が起こりました。喧々諤々の議論の末、サミュエル・ハンチントンという人が提唱したのが「ブロガーの衝突」論です。


「ブロガーの衝突」とは何か?それは、現代のブロゴスフィアにおいてはブロガーの属する文明同士の衝突が対立の軸になるという考え方です。ブロゴスフィアは主に8ないし7つの文明に分けられます。


・テキストサイト文明・・・DPZ*2などが主要サイト。主にネタ的な文章を取り扱う事が多い。「ネット界をその黎明期からずっと見てきた」という自負から「歴史」や「過去の出来事」を重視する。モヒカン文明ほどではないが「規律」や「ルール」を重視する。また、「○○(サイト名)と同じことやってるのになに騒いでるんだ」ということでブログ文明の馬鹿騒ぎに批判的スタンスを取りがち。ブログ文明と「ソーシャルブックマーク」や「無断リンク禁止」などで対立している。


・モヒカン文明・・・技術至上主義者、「モヒカン族」たちによる文明。ネットの世界では神出鬼没。色んなところのコメント欄やブックマークにツッコミビリティという名のハンドアックスを投げる人たち*3


※以上2つは「ネット」黎明期に現れた大文明、「ニフティ文明」から分派した。ニフティ文明のテキスト・雰囲気優先主義者がテキストサイト文明を、技術至上主義者がモヒカン文明になった印象。


・オタク文明・・・オタクと呼ばれる人々が運営しているサイトの総称。ネットの世界ではテキストサイト文明・モヒカン文明に並ぶ老舗。その興味関心はネットというよりもオタク論壇ないしオタクコミュニティにあることが多い。


・ブログ文明・・・「ウェブログ」の発明以降ネットに進出してきた人々。話題は多岐にわたる。政治経済、自分語り、評論まで。「クネクネ」、「揉め事」、「クリリン」などのジャーゴンソーシャルブックマークトラックバックなどの先進機器を軽やかに使いこなす人々。ネット界の歴史的な知識はないのでその事でよくテキストサイト文明から批判される。いわゆる「電波」やハシエンダ的な存在の人*4に対する耐性がネットの先人達よりも弱くすぐに揉め事や閉鎖騒動などをおおごとにしてしまう。


アフィリエイト文明・・・「リアル」でのステップアップや金銭的利益つまりGREE的なノリ*5マネーの虎的ノリを最優先する人々。代表例はプリンシパルエージェントやナレッジパーク*6が運営しているブログ全て。「○○ブログランキング」や「アクセス数」、「社長」、「起業」といった単語が大好き。リアルでの利益追求を何よりも嫌う2ちゃん文明とは対立関係にある。


・2ちゃん文明・・・2ちゃんねるをメインの活動の場としている人々。その多くは様式美としての芸を追及する人々ではあるが、その一部は「道義的正しさ」を何よりも優先する。「リアル」での利益追求を至上命題とするアフィリエイト文明の人間とは対立している。


・ケータイ文明・・・パソコンではなく携帯からサイトにアクセスするネット新世代。年齢も若い。その活動内容はよくわかっていない。


・オーマイ文明(存在すると仮定した場合)・・・「オーマイニュース」を中心とした人々。「リアル」での慣習・取り決めを最優先し、ネットに持ち込もうとする人々。「自分は他人の批判をするが他人が自分を批判する事は許さない」、「何か揉め事があったときには「大人の判断」によって解決する*7」、「偏差値70以下の人間はサイトに書き込んではいけない」、「実名で文章を書く人間は偉い。実名を公開できない人間は責任のある言論を出来ない」といった主張をする。


ItmediaやCENT JAPANなどははどの主要な文明にも属さない(どの他国とも文明を共有しない)孤立国であるとされています。


これらのブロガー文明同士が対立しながらもブロゴスフィアは今日も平和なわけですが、ハンチントンが考えたのは、そこから一歩話を進めています。つまり「ブロガーの断層線」です。異なったブロガー文明同士が接する場所、それがブロガーの断層線です。例を挙げましょう、はてなやmixiといったサイトは様々な文明圏の人間同士が接しやすくなっています。そのために「無断リンク禁止」や「印税問題」などで大きな揉め事になります。これが例えばライブドアブログなどであればほとんどの人々がアフィリエイト文明であるため*8、こういった対立は起こりえません。オーマイニュースは以前はブロガーの活断層として有名でしたが、昨日オピニオン会員の締め出しを行い、オーマイ文明のみのサイトとなりました。


「ブロガーの衝突」時代で必要な事というのはなんでしょうか。一番重要なのは「他の文明にコミットしない」ということです。自分達の文明が「ネット界唯一の普遍的価値観」であるとして世界の警察然として振舞う事。それこそが一番危険な思想であるといえるでしょう。まずは他人の価値観を認めることからはじめましょう。
・・・そんなこと言ったって、多分ムリだろうけどね!


この項、了

文明の衝突

文明の衝突

*1:仲谷昇さん追悼

*2:デイリーポータルz

*3:参照:http://mohican.g.hatena.ne.jp/keyword/%e3%83%a2%e3%83%92%e3%82%ab%e3%83%b3%e6%97%8f

*4:ヒント:エクスタシー

*5:otune氏の命名による

*6:プリンシパルエージェント:http://www.p-a-japan.com/ ナレッジパーク:http://www.k-park.com/

*7:http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=000000004326

*8:凄い偏見だ!