古田ラジオの日記「Welcome To Madchester」

フリーライター・婚活ライター・婚活アナリスト、古田ラジオのブログです。

リバタリアニズム・インターネット

http://d.hatena.ne.jp/furukatsu/20071202/1196530335


インターネットにおけるリバタリアニズムの主張とは何でしょうか。
それは「(ネットおける)自由は素晴らしい」というものです。
基本的にインターネットにおけるリバタリアンはネットにおける発言内容の自由を認めます(それが誹謗中傷であったとしても)。ネットにおけるコンテンツ発表の自由も、ダウンロードの自由も認めます。コピペの自由もネゲットの自由も認めます。それが他人の自由を侵害しない範囲においては。
これに対して、ネットリベラリストととでも呼べる人たちはこう主張します。
「自由は素晴らしい、だが平等(公共の利益)も大切だ」
また保守主義者はこう主張します。
「自由は素晴らしい、だが伝統(道徳)も大切だ」
基本的に「自由」はある程度普遍的な価値です。よい悪いはさておき、個人の自由は尊重されるべきであると多くの人が考えています。ですから問題は自由をどれぐらい認めるか、ということになります。リバタリアンはその範囲が広く、リベラリズムや保守主義においてはその範囲は狭まるでしょう。


例えば、ネットでの匿名・実名問題に関してリベラリストは実名での主張を推奨します。つまり、公共の利益(事件解決であったり、責任ある言論だったりする)のために自由な発言という自由を放棄しろと主張します。一方、保守主義者も、ネットの秩序をよりよくするために実名化を推奨します。
しかし、リバタリアンはネットの自由を侵害する実名化に反対するでしょう。


アキハバラ解放デモのインターネットサイトに関して、リベラリストは公共の利益(反社会勢力の勢力を伸張させるべきではない)からそのサイトの閉鎖を主張するでしょう。一方で、保守主義者は「オタクは静かにしているもんだ」という道徳的な理由からそのサイトの閉鎖を主張するでしょう。
しかし、リバタリアンは反社会的であれ公衆の良俗に反するものであれ、インターネットサイトの閉鎖を強制しようとはしないでしょう。リバタリアンは知っています、反社会的なそのサイトの自由を擁護することで(それよりはまっとうであると信じられる)自分のサイトの自由はより擁護されるであろうということを。


インターネットの世界ではその中でより利益を得ている人と、利益を得ていない人がいます。リベラリストは利益を得ていない人のために、より利益を得ている人の活動を制限しようとします。例えば回線を頻繁に利用したりする人間に税金をかけたりします。ネットを閲覧する時間の余裕のあるフリーターや学生は、時間のない社会人よりも有利な立場にいるので、ネットへの接続時間を制限しようとします。一方で保守主義者はネットの議論は何の価値もないと主張します。つまり、ネットは道徳的でもないし、それよりは外で遊んでいたほうが良いからです。
リバタリアンは自分の時間をどのように使うかは個人の自由だと考えます。2chでどれだけ遊ぼうが、論壇で長文エントリを書こうが、すべては自由です。


アフィリエイト収入や名声、影響力といったネットの恩恵は偏っています。しかし、それを「誰がどのように誰に対して」配分するのでしょうか。どんな基準でどれだけ恩恵を再配分すればよいのでしょうか。そして、守るべき伝統や道徳とは一体なんでしょうか。たとえば、無断リンクをすることは道徳的でしょうか、暴言はどの程度・頻度に止めるのが道徳的なのでしょうか。そしてそれは誰が決めるのでしょうか。正しいリベラル・保守の皆さんがまさか「弱者とは自分自身のことである」などという利己的な科白を発せられるとも思いませんので、つまり「ネットにおける弱者とは何か」「ネットにおける道徳とは何か」という事を客観的に全員に合意のとれる形で提示できるということでしょう。そして、それをある他人(人はそれを役人と呼びます)に決めてもらうというのは果たして合理的なのでしょうか。それをプロバイダなりブログサービス会社が代行することはできます。どちらが合理的なのか、その答えは出ていません。


インターネットの世界には秩序を強制する国家はありません。異なる信条の人間がいて、個人と社会とが併存しています。確かに、金銭を媒介とした世界ではないので、ここで弱者となっても生き死にの問題にはなりません。だがしかし、この国なきインターネットの世界においても決定的なカタストロフはおきず、ある一定の範囲で秩序は保たれている、そのことは記憶しておく必要があるのではないでしょうか。そして、古沢克大氏におかれましてはまず蔵研也*1の前にウォルター・ブロックを読むことを勧めたいと思います。その前に「マングローブ」だと思いますが。

不道徳教育

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マングローブ―テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実

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*1:むしろこれは捨てていい