古田ラジオの日記「Welcome To Madchester」

フリーライター・婚活ライター・婚活アナリスト、古田ラジオのブログです。

2030年の禁ダウンロード法

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0712/18/news065.html


http://japan.cnet.com/blog/takahito/2007/12/19/entry_25003188/


2008年に「禁ダウンロード法(ダウンロード違法化法案)」が成立した時、文化庁の担当者は頭をかかえる事になった。なぜなら、それを取り締まる方法が全くなかったからだ。
本々、違法サイトからダウンロードを取り締まる事を目的としたこの法律、いかにして「合法サイト」と「違法サイト」を見分けるか、そして消費者側の「悪意のある/なし」を如何にして見分けるか。キャリア官僚の優秀な頭脳をもってしても、とてもじゃないがわかりそうもない。
頭を抱えた担当官にとっての福音は意外というか、いつものあの場所からもたらされた。


グーグルがやっぱり「デスクトップ上の音楽ファイルが著作権上不正に取得されたものでないか」判定する常駐ソフト、「freeride(フリーライド)」を開発したからだ。さらに、インターネット上を監視し、「合法サイト」と「違法サイト」を判別するソフト「match pump(マッチポンプ)」も開発された。そしてここで「合法サイト」と認定されたサイトに対してはデジタル透かし付きの「適法バッジ」が配布されることになった。
基本的人権の侵害ではないか」という意見もネットを中心に出された。しかし、当時発生した大規模な著作権侵害事件=試験導入されていたmatch pumpで発見されたi-TunesStoreそっくりの違法サイトが年間数千万ダウンロードをを記録していた事件。によってこれらの声はかき消された。一方で、当時試験導入されていたこれらのソフトがあまりにも厳密に作動するため大塚愛やオレンジレンジの楽曲を適法に持っていても著作権違反として警告がでるという笑えない事態も一部では発生していたという。
しかし、本当の理由は、一般の大多数の人々にとって音楽や映画といった文化的営みがすでにどうでもいいものになりつつあったからかもしれない。


それはともかく、2010年以降出荷されるPCには全てfreerideが搭載されることとなった。搭載されていないPCは「闇パソコン」とよばれオークションで高額のプレミアがつくことになる。freerideとmatch pumpの開発・配布(実際はグーグルに委託しているだけだが)と「適法バッジ」の発行(もちろん有料だ)、そしてこれらのソフトが参照する著作物データベースの維持・管理。これらがJASRACが母体となった著作権管理機構、ISR(Internet Society for Rights)によって管理されることとなった。これらの業務を独占的に行い、2020年代にはISRは毎年数百億の利益を上げることとなる。もちろん、ISRの上層部には文化庁・警察庁、そしてそこと親交の厚い皆さんが名前を連ねることとなるのだが。ISRは音楽だけではなく、ネット上で配布されるおよそすべてのコンテンツに利害関係を持つ人間の権利を代弁した。映画・ゲーム・マンガ・アニメ…これらのコンテンツがすべてISRによって権利者の権利を厳密に守った。そして、法律を破った者たちには容赦なく課徴金という名の制裁を加えた。もちろん、サーバーを海外に移す事でこれに対抗しようとする人間もいた。しかし、freerideによって違法コンテンツのダウンロードが自動的に通報されるようになってしまった以上、「闇パソコン」を使ったやりとりにとどまらざるを得なかった。
ISRによって権利者の権利は守られた!クリエイターたちのクリエイティビティは守られたぞ!
素晴らしいことだ。鼻から誰も信じていなかったが、クリエイター達の権利が守られても、作られるコンテンツの質は別に上がりも下がりもしなかった(もっとも、「あまりにもあからさまなパクリ」は「著作権の侵害」として通報されてしまうリスクが発生したが)。


2030年。ISRによるネットでの著作権管理はいまだ続いている。だが、街に出てみるとi-podを聴いている人は少なくなった。そして、その代りにウォークマンで音楽を聴いている人がほとんどになりつつある。これは、CDコンポがローカルPCとほとんど同じ感覚で楽曲管理ができるようになったことが大きい。そして、多くの人はアナログレコードに再び目を向けようとしつつある。
ネットに目を向けてみよう。ネットのギークと呼ばれる人々の間では数年前から以下のような会話が頻繁にされることになる
「なぁ、フォーラムって知ってるか?」「おれはニフティサーブだぜ」