古田ラジオの日記「Welcome To Madchester」

フリーライター・婚活ライター・婚活アナリスト、古田ラジオのブログです。

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自分探しが止まらない (ソフトバンク新書)

自分探しが止まらない (ソフトバンク新書)


就職活動当時、エントリーシート的なものが書けなかった。
「あなたはなぜ当社を志望しましたか」
「あなたがこれまでで一番努力した事を教えてください」
「あなたは今までの人生で何をしてきましたか」
何一つ書けなかった。
私は人に何か物語れるような経験を何一つしてこなかったからだ。
サークルも、趣味も、何もかも。
生まれてこの方、適当に生きてきた。適当に起きて、飯を食って、本を読んで、テレビを見て、ゲームをした。
私は一度も、何一つしてこなかった人間だ。そもそも「やりたいこと」すら何もなかった。
そりゃあ、ゲームやマンガや、いわゆるサブカルチャー的なものは好きだった。
だけど、「ガチサブカル」などではけしてなかった。ヌルサブカルですらない。
ましてやオタクでもなかった。
人の知らないコンテンツを消費して優越感ゲームを行おうという発想すらなく、「なんだかよくわからないもの」としてずっと生活してきた。そしてその生活に何の疑問も持たなかった。


「自己分析をしろ」
就職活動中、嫌と言うほど聞かされた言葉だ。
だけど、自己を分析すればするほど「ほんとうのわたし」なんてものは何処にも存在せず、あるのは空っぽな空洞でしかないということを思い知らされた。生まれてきてからずっと適当に生きてきたのだから、ある意味当然かもしれない。その時に私が発明したのが「出版社に入りたい」という理屈だった。何が作れるわけでも、何をしてきたわけでもなく、それでも自分のプライドは何となく保たれる。我ながら善い選択だ(ちなみに、今になって考えてみると、毎年数人の採用枠しかないところに数千人の応募が殺到する枠に私みたいなどうしょうもない人間が採用されるなんていう考えはおよそ正気の沙汰とは思えない)。ただ、それでもそれを志望する理由というのはよくわからなかった。毎回、エントリーシートを書くのに酷く苦労したのを覚えている。
志望動機や自分が努力してきたことなんかをすらすら言える人間が偉くて、それができない私はおかしい人間だ、そうしなければダメなんだと思って努力もしてみたけど、全くうまくいかなかった。
結局、今いる会社以外何処にも内定もらえなかったし、今の会社でも何一つ仕事らしい仕事はできていない、と思う。 大体、今の仕事なんて全く好きでもなんでもない。そんな私が会社に今まで「いさせていただけている」のは一重に日本的企業慣習と運のなせるワザだと思うのだけれど、それでも「ほんとうのわたし」は見つからない。
そもそも、
「人間はすべからく自立した個人として自分のやりたいことを見つけてそれに向かって努力しなければならない」
という発想自体が近代の一つの病であると思う。それに従って「近代的個人」になれる人間は幸せだ。
ただ、多くの人たちはそういった生き方を遂行する意志も能力もなく疲れ切ってしまう。
だからこそ、多くの人たちには宗教なり、国家なり、歴史なり、何らかの形で自らが依って立って「いきいき」できるものが必要だ。
だが、全ての「正しい人たち」によってその大きな物語たちは解体させられた。
それでもなお、多くの人々は「いきいき」できるものを探している。多分、それらの新しい偶像の一つがいわゆる「自分探し」だ。
自分語りのポエムに戻る。
私は結局、どこにも何となく属せない人間なのだ、ということが何となくわかってきた。
結局、近代的個人でもなければ、「いきいき」して、それを動力として何かに打ち込めるタイプの人間でもない。
そして、「ほんとうのわたし」はいつまでたっても見つからないままだ。
それでもなお、なぜ私は仕事をし続けるのだろう。それは多分、New Order聴いてるような人間、それはサブカルという意味ではなくて、世間から外れた「なんだかよくわからないもの」という意味だけど、そういう人間だって仕事できる人間はいるという事を証明したい、ただそれだけだと思う。
私が一つ商品を売るごとに、「自分が正しくて世界が間違っていた」ということを証明できるような気がする、多分、ただそれだけなんだろう。

「ただ、ビーンの心に、一つだけ大きな不安が残った。−本当は誰にも理解してもらえないのではないか?いつの日か、ポールとふたりでさらに効果的な方法を見つけて、少ない資金で輝かしい球団を生み出すかもしれない。が、ワールドシリーズの優勝記念指輪をひとつか2つ持ち帰らないかぎり、誰も気にかけてくれないだろう。そしてもし優勝できたとしても−自分には何が残るのだろうか?ゼネラルマネージャーのひとりとして一時もてはやされ、やがて忘れられる。たとえほんの一瞬でも、自分が正しくて世界が間違っていたのだということは、誰にもわかってもらえない…。」
(「Money Ball〜奇跡のチームをつくった男〜」)

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