古田ラジオの日記「Welcome To Madchester」

フリーライター・婚活ライター・婚活アナリスト、古田ラジオのブログです。

来るべき新秩序

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)


以前感想を書いたんですが、こちらの本の著者、城繁幸氏が新著を出していらっしゃったので読みました。その名も「3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代」とのこと。
3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代 (ちくま新書)

3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代 (ちくま新書)


前回取り上げた時のエントリ
http://d.hatena.ne.jp/republic1963/20061005#p2


前著を読んだ時にも思ったのですが、著者の方は時代の空気感を捉えて言語化することに長けた方だと思いました。
著者が言う22の「昭和的価値観」を取り上げ、それから外れてしまった「アウトサイダース」=いい大学出て、いい会社入って、そこで部長ぐらいまで勤め上げて…という世の中の真っ当なレールから外れた人たちにインタビューをしており、「昭和的価値観」への反論を試みるというのが趣旨です。
http://www.doblog.com/weblog/myblog/17090/2615641#2615641
↑ご本人が書かれている紹介文


ここで言われている「昭和的価値観」というのは終身雇用であったり、年功序列であったり、大企業信仰の事をさします。それら「昭和的価値観」に代わる「平成的価値観」を模索するとの事ですが、それにしても過激な内容の本です。マスコミの話であるとか、大企業の話であるとか、既存左翼のどうしょうもない体たらくなどに関して、いわゆる著述を仕事としている、メディア側の方がこういう事を書いたことにはちょっとびっくりしました。いちいちもっともな話で、大企業には信じられないぐらいの高給をもらって、信じられないぐらいの(しょうもない)仕事をしている人がいます。それはそうですが、ここで書かれている内容はかなり過激です。梅田のもっちーの「ウェブ進化論」を評してハルマゲドン2.0と評したのはid:gotanda6氏ですが、構造としては全く同じ。つまり、「もうすぐNew Order(新秩序)がやってくるからみんな早くこっちに来い」という。「こちら側」というのはつまり実力主義であったり、多様な労働観であったりします。
ここの部分に関しては私はかなり懐疑的です。本書の主張の一つは、あとがきに一言でまとめられています。

本来時給三千円の人間を時給一千円でこき使うのは悪だが、時給千円分の仕事しかしていない人間が三千円もらう事もやはり悪なのだ


という事です。これは組織に身を置いた人間の実感としては圧倒的に正しいと思います。そしてこれは恐らく色んな閉塞感の正体であると私も思います。ただ、これが実現する世界は恐らくやってこないと私は考えています。これを通すにはあまりにも多くの覚悟が必要だから。この当たり前な事が絶対に通らないのが日本という国であり、だからこそ日本は緩慢に死を迎えていると私は思っています。それぐらい既得権というのは強固であると思います。
そして、もうひとつ。本書では若者VS老人という世代間対立をクローズアップして書かれていますが、これも結構難しい話で、というのも、いるじゃないですか。はあちゅうとか。
ここでずっこけてる人が多数だと思うんですが、これは結構マジな話で、「若者」の中にも「既得権側」の利益のおこぼれにあずかってる人がいるでしょう。はあちゅうの場合、たぶん裏にはアンソニーロビンズとユダヤのフリーメーソンがいるのだと思うのだけれど(笑)、ああいった「学生でなんかしました」、「イベントサークル」やってましたとか、そういうのには企業側も目をつけて明らかに金を落としてるわけじゃないですか。さきっちょでしたっけ、相方は。あの人もライブドアパブリッシングに就職も出来てるわけでしょ。そんな感じで、一部の既得権からおこぼれをあずかる若者がいて、そういう人達をみんなうらやましがってる訳だから、レールから外れた人も外されてしまった人(むしろレール側に拒否された人たちだ)も圧倒的に不利な戦いをしつづけなければならないと思います。そこで、言いたいのはレールを外れるかそのまま乗り続けるか選べる人はまだ幸せだという事です。そもそも選択の余地すらなくレールを外されてしまっている人もいます。アウトサイダーにならざるをえない人はいます。だけどそこで気をつけなければいけないのはそこで内ゲバをしてもしょうがないという事。
要するに著者がこういったともするとハルマゲドン2.0とも取られかねない内容の本を書いたのは恐らくそういった部分での危機感があってのことなのではないのでしょうか。
たぶんロストジェネレーション世代(まぁ私らのことなんですが)は下の世代にとっては負け犬世代として罵られて、ロストジェネレーション世代が味わった苦難は全てなかったものとされ忘れ去られるでしょう。そして20年か30年後かに巨大な不良債権としてもう一度登場してくることになります。願わくはそこで強制収容所に送られるような社会にこの「美しい国」がなっていないことだけです。
個人でできる事は限られています。でも、私は条件付きですがこれを支持したいと思います(偉そうですが)。
来るべきNew Order(新秩序)がどんなものか、それは誰も知りません*1

*1:言葉そのままの意味で「ナチの提唱する新秩序」っていうオチは勘弁してほしいが