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古田ラジオの日記「Welcome To Madchester」

フリーライター・婚活ライター・婚活アナリスト、古田ラジオのブログです。

『秒速5センチメートル』は童貞臭いか

※一部ネタばれを含みますのでご注意ください。

秒速5センチメートル』を見てしばらく経つのですが、何か書きたいとずっと思っていて、ずっともやもやしているのですが、ようやく考えがまとまったので書いてみます。
「『秒速5センチメートル』は童貞臭い」「女性にはウケない」とはよく言われる事ですが、これは本当でしょうか。
そもそも、「○○って童貞臭い」と言われる場合、そこには二つの要素があります。
一つは、「登場人物の思考が童貞臭い」という事です。
例えば、小田原ドラゴン先生や花沢健吾先生のマンガの登場人物というのはほぼ例外なく、童貞臭いです(これは、「中二病」や「ヘタレ」という単語と密接不可分の関係にある)。これが最も狭義の「童貞臭い作品」となりますが、それをもって童貞臭いという事は割と簡単です。


もう一つは、「周りの環境が童貞臭い」という事です。
これは、周りの環境=登場人物の造形が童貞臭い、というものです。
少しわかりにくいので「周りの環境が童貞臭い」を2つに分類して詳しく見ていきたいと思います。


・極端に都合のいい女子が出てくる(空から降ってくる型)
「このクラスのやつらはみんな女子が空から降ってくると思ってるな」
とは、私の大学の同級生の大名言ですが、こういった童貞の都合のいい妄想を具現化した女子が登場する作品というのは、童貞臭いと言えるでしょう。「空から降ってくる」をまさに体現した『天空の城ラピュタ』や最初から何もしなくても主人公はヒロインの事が好きだというある種のラブコメはこちらに分類されます。
また、意外なところでは『ドラゴンボール』もこちら側に含まれます。考えてみてください、孫悟空はチチと結婚するまで結婚の事をメシだと勘違いしていたのですから(しかも、約束していたことを忘れている)。


・主人公の何らかの成長とセットで女子がついてくる(成長型)
もう一方は、主人公の主として内面の成長とセットで女子がついてくる、というものです。
こちらの代表例は藤田和日郎先生の一連の作品『うしおととら』『からくりサーカス』です。これらの作品において主人公はほぼ例外なく都合よくモテモテですが、これは主人公の内面の成長を伴って描かれます。つまり、シチェーション的にはいかにも都合の良い感じで描かれますが、蒼月潮にしろ才賀勝にせよ、モテるに足る人間的成長を見せている事が担保されているわけです(だからこそ、読者としては「良かった!」となる)。
実は「童貞」と「成長」というのは非常に相性のいいテーマで、「STAND UP!」などの学園童貞喪失モノのドラマにも「童貞喪失コメディ」というテーマの裏に「主人公達の成長」というテーマが隠されていて、そのおかげでただのおバカなコメディでは終わらないようになっている、という部分があります。つまり、成長型の童貞喪失は「少年誌的成長物語=ビルドゥングスロマン」として機能している側面も持ち合わせている、という事になります。



ここから本題に入ります。
秒速5センチメートル』を見て童貞臭いと思うのはなぜでしょうか。
多くの人は、出てくる女子が都合が良いことをもってそういっているのではないかと思えるのですが、これは少し違うように思えます。


だって、付き合ってないじゃん。


新海誠の作品*1に共通するのモチーフとして「昔好きだった女の子をずっと想い続ける意志の力」というものです。『雲のむこう、約束の場所』においてそれは「約束を果たす」という形で結実したために、少年誌的ビルドゥングスロマンの傑作として見る事ができました。
ただし、「意志の力」って聞こえはいいんですが、これって『からくりサーカス』の敵の親玉であるフェイスレス的な妄想*2なんじゃないかと思います。
確かに、劇中で主人公・貴樹の事が最初から好きだという花苗@都合のいい女子は登場します。ところが、貴樹はまだ明理の事が好きだという事で、告白もできずに終了してしまいます。ところがここで花苗は見事にその失恋の経験を乗り越えて成長します(その成長は花苗のサーフィンという形で象徴的に描かれます)。そう、『秒速5センチメートル』においては、主人公が全く成長せず、「昔好きだった女の子をずっと想い続ける意志の力」でゆんゆんとなっている一方で、周りの女性陣はガンガン成長していきます。第一、ヒロインである明理自体が、第一編において貴樹と別れた時点で貴樹の事を過去の思い出として振り切って全く別の人生を歩んでいるのではないのでしょうか。
秒速5センチメートル』において主人公の「意志の力」は結実しません。というか、一旦は「明里の住む栃木まで行く」という形で結実しますが、それがすなわちハッピーエンドにはなりません。その意味で第2話というのは「貴樹バッドエンド後の世界」だと言えるでしょう。そこで物語を駆動させるのは「意志の力」ではなく、「少年誌的ビルドゥングスロマン(ただし花苗@都合のいい女子の)」になります。


つまり、『秒速5センチメートル』の童貞臭さとはすなわち、主人公自身の童貞臭さ*3であるといえるでしょう。女性がこれをみて嫌悪感を持つとしたら、それは『ボーイズ・オン・ザ・ラン』や『チェリーナイツ』と同じ種類のものであるのではないでしょうか。


参考:http://diary.clue-web.net/?eid=737507

*1:『雲のむこう〜』と『秒速〜』は見ましたが、『ほしのこえ』は未見

*2:マジでネタばれのため自粛。フェイスレスには「これぞ中二病!」的超名言があるので気になる人は単行本読んで是非確認してみてください。

*3:3年間付き合った眼鏡女子を平然と振る(おい!)人間とは思えんな…

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