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古田ラジオの日記「Welcome To Madchester」

フリーライター・婚活ライター・婚活アナリスト、古田ラジオのブログです。

「専業主婦批判」という既得権批判:書評『日本の男を喰い尽すタガメ女の正体』

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「ビジネスメディア誠」の記事「『結婚生活ってどうなの?』と妻に本気で聞いてみた 」が更新されたのでサブノート的エントリでも。

今回の元ネタになったのは『日本の男を喰い尽すタガメ女の正体』でした。

なかなか面白い本だったので今回はその書評でも。

日本の男を喰い尽くすタガメ女の正体 (講談社プラスアルファ新書)

日本の男を喰い尽くすタガメ女の正体 (講談社プラスアルファ新書)

 

 タガメとは田んぼに生息してカエルの生き血を吸う昆虫。高度成長期以後、日本の各地から田園風景が消える中、タガメの魂は女性たちに宿り、無抵抗な「カエル男」を箍(タガ)にハメて搾取している。すなわち「タガメ女」は「箍女」でもある。気鋭の研究者が、自らの研究過程やゼミ生からの証言をもとに、「専業主婦」「家事手伝い」という姿で女性が現代日本を支配する特異な現象を、ユーモアを交えて実証する。

〈amazonの内容紹介より〉

この本は色々と言い訳していますがその実質はタガメ女=専業主婦批判の本です。

実は今「婚活論壇」では「専業主婦批判」がブームです。「専業主婦はタガメ女だ」に限らず、「専業主婦志望だから結婚できない」「専業主婦を養える男は3.5%しかいない」等々。よって、その視点自体に特に目新しさはありません。

タガメ女」の類型にしても、「安定」した職種の男性との結婚を望み、結婚したら郊外の一軒家かマンションで35年ローンを組んで夫を縛り付ける。さらにはお小遣い性で夫への支出をギリギリまで押さえる一方で(この様子が「タガメ女」たるゆえん)、自分は専業主婦としていかに家庭を守っているかをアピールし、ママ友との見栄の張り合いとデパートでのブランドショッピングに精を出し、イベントと「約束」とディズニーランドが大好きで、投資より定期貯金に励み、携帯はスマホよりもガラケー等々……。まるでネットの「まとめサイト」に登場する「スイーツ(笑)」や「結婚するとこうなる」系のテンプレに登場しそうな人たちです。タガメ女~』内ではドラマ『半沢直樹』の半沢直樹・花夫妻が典型的な「タガメ女・カエル男」カップルだとされています。

 

では、この本が変わっているのはどんなところでしょうか。

 

それは、タガメ女に搾取されるカエル男を被害者ではなく、一種の共犯関係だと考えているところです。つまり、ここで批判されているのは単なる専業主婦制度だけではなく、これまで専業主婦制度が支えてきた「正社員中心・年功序列・終身雇用」といった、「いわゆる日本的な会社社会」そのものなのです。

 

これまで専業主婦や「正社員中心・年功序列・終身雇用」といった個別の制度を批判した本はそれこそ枚挙にいとまがありませんが、これらの補完関係を明らかにし、専業主婦批判、という我々がいかにも好みそうなネタを使って批判している。この構成は極めて見事としかいいようがありません。

 

ただ、これは他の専業主婦批判の本も同様の弱点なのですが、専業主婦なのか共働きなのか、というのはそれぞれの家庭の事情です。ようするに「その人たちの勝手」のはずです。本人たちの能力・資質の問題もありますし、基本的に一概にどちらが良いと他人が決めることはできないはずです。「日本的会社社会」と「専業主婦」というセットは現在、一種の既得権であり、その既得権を批判するというのは理解できるのですが、「このままでは世界に取り残されてしまう~」というサンデーモーニングの金子勝みたいな、あまり説得力のない理屈になっています。

 

また、タガメ女・カエル男カップルがダメだという事はわかるのですが、じゃあどうすればいいのか、という事に対して、ほとんどまともに書かれていないのも若干マイナスです。「自分の頭で考えろ」と言われても困るのは私だけではないでしょう。じゃあ共働きだったらいいのか、どうしたらいいのかというのが全く分からない。

 

この「ロールモデルの不在」というのは婚活を扱う上でずっと問題になっています。国やマスコミが取り上げているのは相変わらずの標準世帯の「タガメ女・カエル男」カップルだし、結局、突飛な有名人の結婚生活インタビューを聞く羽目になるか、domainiメイツ(こないだ「35歳の結婚」特集やってた)みたいな読者モデル系ぐらいしか思いつかないわけで、それでいいのか、という。

そこで「小町」ですよ、という声が聞こえてきますが……。