「クラウドワークスで月収20万」選ばれしライター像について考えてみた
続き。
今日、「それ見たことか!」的な記事が上がっていた。
クラウドワークスで平均月収が20万円を超えているのはわずか111名、その内訳でみると、エンジニアが38%、デザイナーが27%となっており、ライター職は3.6%。
111人の3.6%だから約4人。ドラクエ3の勇者ご一行と同じ人数であるから、まさに世界を救う選ばれしライター達である。
そんな選ばれしライター達について、当該のエントリ内に気になる一文があった。
月収の高い人が増えてくればクラウドワークスで自分が取ったクラウドワークスの仕事を回すというロックな事案が増えそう。あれ? 元請けが下請けにマージン抜いて丸投げするアレじゃないですか? まじかよ〜。
クラウドワークスで月収20万超え、わずか111名。働き方革命の未来はどこにある? - GoTheDistance より引用
まず、考えたいのは狭義のライティング業務という仕事は実はクリエイティブでもなんでもなく、工場の機械と一緒だという事だ*1。
ライターが一日に生産できる記事の数量には限界がある。
どれだけ頑張っても1日1本書くのにかかる記事を1日に100本書けるようにはならない。
トヨタやソニーの工場で一日に生産できる車やPS4の数は生産設備に依存するのと同じなように、ライターという仕事のライティング業務の生産設備が自分自身なだけだ。
だから、多くの先輩ライターが「健康に気を付けろ=生産設備のメンテナンスをしっかりしろ」というアドバイスをくれるわけだ(大変ありがたい)。
だが、それでも規模を拡大しようと思ったら、どうするか。
方法は2つある。
・生産設備を増強する
・生産物の単価を上げる
この2つである。
生産設備を増強するというのは要するにクラウドワークスで取った案件をクラウドワークスでやらせるという、さっき書いてあったことだ。
営業力があり、大手顧客から直接案件を取れるのであれば、自分は単価の高い案件に注力し、他の案件はクラウドワークスに回すという、胴元ビジネスが成り立つ。
これは割と誰でもかんがえることなので、クラウドワークス上がりの人がやらなくとも、編プロの人で普通にこの辺の事は考えているだろう。
で、もう一つの生産物の単価を上げるというのは、要するにより高度かつ上流の案件を取ってくるという事になる。
ニュースサイトやオウンドメディアの運営でも、ECサイトの更新でもなんでもいいんだが、顧客に入り込んでサイト企画のレベルから入り込み、実運営に関しては極限まで単純化した上でクラウドワークスに投げる、という仕組みを作る。
これだと、単純にクラウドワークスの市場価格と受注金額の差額分儲かる形になり、サイトが続く限り売り上げが立つのでかなりおいしい。
実際、クラウドワークス自体が「あれ、これ俺らが直接取りに行った方が良くね?」という感じでBPOビジネスをやっていることを決算説明資料で書いていることからもまぁ多分そういうことになるのだろう。
で、ここでポイントになるのはどちらの場合でも重要になるのは営業力だということだ。
つまり、
これまでよくあったカリスマ的なライター・編集者社長と弟子みたいな編プロでもなく、
今はやりの「ボクタチクリエイティブでノマドでコワーキングスペースですわ!」みたいな意識高い系編プロでもなく、
某OA機器販売商社的な「今日もテレアポしまくりますわ!ニューコールしてきますわ!!!」的な編プロが最強、
という当たり前かつ、つまらない結論になる。
冒頭の、勇者ロトご一行の話に戻ると、彼らに突き付けられているのは、今後売り上げを伸ばして行こうとしたら、どんな形で営業力をつけ、仕事を取ってくるか、という話なんだが、問題はそんな某人材系企業のような編プロはあんまりない(と思う)ことだ。
だからこそ、クラウドワークスが自分たちでBPOビジネスをやろうとしていて、インフラを整備しているというのは強みなわけで、
クラウドワークス社がブランディングみたいな話をしているうちはライター・編プロ的には非常にラッキーで、某クーポン購入サイトのように彼らの中に「光の一族」を見かけるようになった時が本格的にヤヴァイという事になる。
それにしても、「ライターデビューするためにはクラウドソーシングサイトで記事を書こう」みたいな「ご高説」をおっしゃる方は、まずこの決算短信を読んでからにしてくれ、と改めて願ってやまない次第である。
*1:もちろん、企画や取材など個人の裁量部分も大きいので、「ライター」という職種はそう単純には言いきれないが