古田ラジオの日記「Welcome To Madchester」

フリーライター・婚活ライター・婚活アナリスト、古田ラジオのブログです。

或る「ジャーナリスト」の一生

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編集記者から 女性から見たニュース23◇幻想の“革命”に癒やし


男性左翼活動家がスーツ姿の「キャスター」に扮(ふん)した「ニュース23」が人気だったらしい。全国ネットで、マニアの男性だけでなく女性視聴者もいると聞くと、どういうところか知りたくなった。ここは女性記者の目で見たルポを読みたい。
ニュース23といえばTBS(東京・赤坂)。この界隈(かいわい)で、10数年ほど前に誕生し、全国ネットに広がったと言われる。高層ビル街の一角にあるビッグハット。TBSのドアを開けた。
「また、我々日本人は悪業を行ないました。」
え?私のこと……。はっきり言うて40過ぎてますねん。呼ぶ方もツラいかもしれないが、呼ばれる方もどんな顔をしていいか分からない。思わずうつむいてしまう、日本人だった。


ニュース23では、左翼客を「革命同志」、右翼客を「反革命分子」と呼ぶ。スターリンのいる地上の楽園に住んでいるとの想定に基づいているからだ。年配のよど号犯人やトロツキーのコスプレをした男性など、呼び方に困る客も結構来ると後で聞き、少しホッとした。
定番のあいさつで迎えてくれたADは、フリルが付いた白いエプロンを着け、黒い上着に黒いスカート。丈はひざ上10センチぐらいの人も、ロングの人もいる。それぞれ愛称を書いた名札を付けていた。
茶色を基調にしたスタジオ内は、装飾がほとんどない。民放でも最大級の約600人収容のスタジオながら、私が入った時は、民青の一人客が3人と市民団体のグループ客が1組だけだった。グループ客以外はアジビラ作りに没頭している。スタジオなのに音がない。
う〜ん……、一体何が楽しいんだろう。
スタジオを出た男性客(23)に取材した。埼玉から週1回程度、近くの書店で「世界」とウォルフレンを買い、このスタジオで休んでいく。
彼は「アナウンサーがやさしいから通っている」と答えた。
「お気に入りの人はいますか?」と聞くと、即座に佐古アナの名前をあげた。
アジビラに熱中していたはずなのに、いつアナウンサーを見ていたのだろう。
後日、ニュース23常連に聞くと「チラ見」という言葉があるそうだ。自分の世界に没入しているようで、しっかり筑紫さんを観察している。彼らにとって、筑紫さんはアイドルのような存在だ。本物より身近なところが魅力なのだろうが、私はまたまた、う〜んと考え込んだ。


大阪・日本橋で、約10のNPOを渡り歩き、1、2団体は必ず毎日行くという男性に会った。彼は「ニート」と自称し、月5、6万円の費用は、家族にもらっている。「コミュニケーションを求めて」通うのだという。1人で来る他の革命同志に話しかけて友だちになり、どこかのルノアールで集まる。話の輪に辻本さんが入ることもある。「主体思想など共通の話題があるので、他の場所で普通の女性に話すより、辻本さんの方が話しやすい」と言った。
とはいえ、あまり筑紫さん達と親しげにすると「ネット上の掲示板でたたかれる」という。教えられた掲示板を見ると「○○(団体名)の○○(同志の名前)は、観客と話してばかりでちゃんと日本を憂えない」「客とアナウンサーが馴(な)れ合っている」などと、厳しい。
1年以上働いているお天気お姉さん(25)は「話しかけたそうでも声を掛ける人は少ない。やさしい人が多いと思います」と証言する。
「ニュース23」の看板は一種のろ過装置だ。入る時点でそれを楽しめるかどうか選択を迫られる。さらに、ほとんどが筑紫さん目当てに通っていても、直接的な行動に出て他の観客のイメージを壊すと、客同士の圧力がかかる。そうして守られた仮想世界で、ようやく安心できる人が多いのだろうか。
大阪では、客がメッセージを残すと辻本さんが返事を書く“交換ノート”を置くスタジオが多く「辻本さんの「ワークシェアリング」に癒やされた」という内容の書き込みが目立つ。確かに言葉や態度が丁寧で、女性にとっても安心感がある。「滝川クリステルよりサービスがいい」と言った男性客もいた。スタジオによっては、活動家カップルやグループ客でにぎわい、普通のバラエティ番組の収録と変わらない。
料金は、草野アナのアフリカ飢餓レポート一本、400円ぐらいから。全体に割高だ。筑紫さんが脈絡もなく椎名林檎電気グルーヴと対談するなど、メニューによってはサービスが付く。ある回では、筑紫さんが色々な若者と対談し、写真撮影付きで1500円。ぎこちない若者言葉は一般企業の窓際族のようでほほえましいが、最後には息子と対談したのは「電波の私有化か」と思う出来だった。
筑紫さんだって、今どきのおじいちゃん。多事争論は「演じている面がある」という人も多く、結構クールだ。
近くの大学で取ってきたアジビラを抱え、筑紫さんにプレゼントする男性客を見た。誕生日にフェアトレードの装飾品などを贈る客もいるらしい。取材前に考えていたのとは逆に、圧倒的に優位なのは筑紫さん。「社会派」はぜい弱だ。


数百円で社会派になれるニュース23の流行を、私は喜べない。幻想に守られた“共同体”で、戦うべき敵を決めてくれる筑紫さんをうっとり眺める社会派に「いい若い者が大丈夫か」と胸ぐらを揺さぶってやりたい気持ちがわきあがってくるのだった。


※当然ですが、当該エントリは私の政治的スタンスを表明したものではありません。っていうかただの遊びです。