「素晴らしく」ない人のための音楽案内 第1回
※要するに極私的CDレビューなので適当に読み流していただけると嬉しいです。
世の中には2つの種類の人々がいる、「素晴らしい」人と「素晴らしく」ない人。「素晴らしい人々」は「美しい国」で恐らく「するべき」趣味の中で「聴くべき」音楽を聴き「美しく」「素晴らしい」国を作っていくんだろう。では、「素晴らしくない人々」は?
第1回 New Order編
New Orderは一度死んでいるとはよく言われることです。それはつまり、前身のバンド、Joy Divisionでのボーカル、イアンカーティスの死という出来事に起因していると思うのですが、New Orderについて語るときにはJoy Divisionからはじめなければならないと思います。このJoy Division、このバンドこそ真の意味で漆黒の闇を抱えたバンドでした。
毎日毎晩清廉潔白であれと 天から大きな声が聞こえる
理性を注意深く見守り 献身と愛を誤解して 自衛本能にひたる
自分の事しか愛せない他人から身を守るために
だけど人生は完成に近づくにつれ
他のものとはほとんど変わらなくなってくる
孤立
(Joy Division「ISOLATION」)
これは全く「素晴らしく」ありませんね。そして歌詞よりもなによりも、恐ろしいのはそれがパンクを基盤としながらシンセサイザーを多用した(今聴くと)ダンサブルな楽曲であるということです。そしてイアン・カーティスのロボットみたいな声!つまり、聴こえる音は享楽的なのにそこに歌われる歌詞とのギャップ、そしてイアンのパーソナリティ。それによってJoy Divisionは稀有なバンドになりました。
その残骸から生まれたNew Order。彼らはJoy Divisonで覗いた深遠なる闇から逃れようとしたわけではなくて、むしろ彼らなりに「Joy Divisionが辿りつこうとした場所」に向おうとしたのではないかと私なんかは思うのですが、確かにその音はよりポップに、享楽的になりました。その中にそこはかとなく潜む狂気と孤独。それこそがNew OrderがJoy Divisonから受け継いだものであるといえるでしょう。
自らが発する光が眩ければ眩いほど、そこから生まれる闇もまた、深いものになる。そして仲間の死を歌った曲(「Blue Monday」)がクラブアンセムになるのは全くもって皮肉だと思うのですが、それをも乗り越えて生きようとする意志。それこそが「美しい国」に生きる「素晴らしくない人々」に必要なものなのではないのでしょうか。
こんな事をつらつら書かせておいて、New Order自体は「あーどうでもいいからEやろうぜー」とか言ってそうなんだけど。そういうところが何よりも私を身悶えさせるんです。
ぼくは君にひとりにしてほしいといった気がする
浜辺を歩いている間に 教えてくれ それがどんな感じなのか
自分の心臓が冷たくなっていくというのは
(君の心臓が冷たく 冷たくなっていく)
New Order「Blue Monday」
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- 出版社/メーカー: イーストウエスト・ジャパン
- 発売日: 1999/11/10
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