文系キャバクラへ行けと彼女は言った。
「文系キャバクラ*1へ行け」と僕は彼女に言われた。
僕が人生で初めて告白した文化系女子だった。
優しくて、賢くって、腐女子で。とても綺麗で。
20歳超えて童貞なんて信じられない。私に幻想を抱かれても困る。
汚物をみるような目で、心底哀れむような目で、僕はそういわれた。
ぼきん、と僕の中で何かが折れる音がした。
そうか。幻想は求めてはいけないんだ。ピロートークでのサブカル語りなんて求めてはいけないんだ。
僕は少ない学生生活の残りを全て脱オタに費やし、一流が集うと言われるブログ論壇に入った。
そして、得た時間のほとんどをネットでのサブカル語りに費やした。
そうか。やっぱり彼女のいった通りだった。とても簡単なことだったんだ。
それから、時間を使うのが惜しくなった僕は、適当にオタクを探した。
なるべく効率を上げるためには、弱いオタクが良かった。
親から愛されなかったオタクや、2次元しか愛せないオタクや、20年後とかとくに考えていない頭が弱いオタク。
みんな、簡単に僕に教化され、僕を崇め奉った。
僕は人間の弱い部分を知っていた。
自分がとても弱い人間だったから、どこをどう揺さぶれば心が揺れるのか熟知していた。
少し揺さぶり、よろけてこけそうになったところを、そっと優しく「現代を生きる処方箋」を教えてあげればそれでよかった。
僕があのときや、あのときに、そうして貰いたかったことを再現すれば良いだけだった。
どんどん弱いオタクを潰し、学習した。そのうち、大抵の文系大学院生は潰せるようになった。
他人の万能感をへしおるのはとても楽しかった。強い人間になれた気がした。
このアニメをけなさないください。二次元を嫌いにならないでください。私を論客として認めてください。
僕は首を横にふって立ち去った。
最初はとても自分がひどい脱オタ説経厨に思えて何度も何度も吐いた。
けれど、じきになれた。だってさ。僕に幻想を抱かれても困るだろう?
強い人間には運もよってくる。ライター稼業も順調にいき、僕はますます強い人間になった。
あるとき、街で僕は彼女に再会した。
僕に文系キャバクラをすすめた女だ。
もうすぐ単著を出すと彼女は僕に話した。
色々話をしていたが、結局のところ、たくさんのオタクを「フィールドワーク」し、非モテにちやほやされて、理想の単著を手に入れたと言う成功譚だった。
そうか。と、僕は思った。理想の単著なのか。
僕は自分の取り巻きの中から、できるかぎりの電波を選び、彼女とブログプロレスを取らせた。
電波は最初は嫌がったが、僕がトラバしてやらないぞと言うと、しぶしぶ彼女とプロレスした。
彼女はすぐに暴言を吐いてコメント欄に粘着した。僕はそのときにスクリーンショットを撮らせて、それを彼女の出版社に送りつけた。
彼女の単著は発売中止になった。
なんだ。彼女の試行錯誤と努力で手に入った関係は、そんなものだったのか。
それから、僕は彼女をとても優しく「平坦な戦場で生き残る方法」を教えてあげた。
彼女は僕に心酔し、僕と一緒に同人誌を作った。
ちょっとアクセスに困ってるんだというと、すぐにトラバをくれた。
アフィリエイトが増えてよかったと僕は思った。
彼女がトラバをくれなくなった。
彼女のサブカルトークにも飽きてきたので、僕は彼女とさようならをすることにした。
このアニメをけなさないください。二次元を嫌いにならないでください。私を論客として認めてください。ちやほやして下さい、文化系女子なんです。
どうか、どうか。
彼女はそう言った。うーん、そうなのか。
僕は言った。
あのね、僕に幻想や愛情を抱かれても困るんだよね。
ちやほやされたい?簡単なことだよね。
「文系キャバクラへ行け」
http://anond.hatelabo.jp/20070625024626
「ジョニーは戦場に行った」を少し思い出しました。なんとなく。
*1:http://worldhistory.g.hatena.ne.jp/keyword/%E6%96%87%E7%B3%BB%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%90%E3%82%AF%E3%83%A9