古田ラジオの日記「Welcome To Madchester」

フリーライター・婚活ライター・婚活アナリスト、古田ラジオのブログです。

2036

※当たり前ですが、全てフィクションですよ!


2036年、大東亜共和国ではオタクを障害者とする「退廃思想隔離法」が制定された。
きっかけはいろいろある、21世紀初頭に勃発し、公安警察まで狩り出されたコミケでのテロ未遂事件、一向に減らない凶悪犯罪やニート、踏みにじられるDQNの尊厳*1や著作権。特に自ら「インターネット常時接続環境さえあればいいや」と嘯き全く働かない人間が急増したニート問題は2020年代にいよいよ年金の破綻が明らかになるといよいよ深刻な問題となった。
決定打となったのは、当時脳科学の権威となっていた、森昭雄・東大名誉教授による「オタク脳」論文であった。
つまり、ある種のアニメーションや所謂アニメ声と呼ばれる女性の特徴的な声が人間の前頭葉に深刻な悪影響を及ぼす事が研究によって科学的に証明されたのである。「オタク脳」になった人間はよくて性的嗜好の変化(幼女愛好)、悪い場合は凶暴性が増し、犯罪を犯す可能性が通常の27倍になってしまうという。
これらの研究結果とニート問題や治安問題への抜本的な解決策を求める世間の声によって、杉村太蔵首相は「退廃思想隔離法」を制定し、オタクを障害者とする事が決定されたのだ。


岡田斗司夫宮台真司は「自分は今のオタクではなく趣味人だ」として、泥舟からの脱出を図った。同様に、U-trun土田や中川翔子なども「ガンダム?何の事でしょう?ぼくらは昔からアーティストでしたが何か?」として泥舟からの脱出を図った。そして彼らの脱出作戦は完璧に成功する事になるのだが、数年後、彼らはそれを激しく後悔する事となる。
かくしてオタクは精神障害の一種となった。アニメや文化放送深夜帯のラジオの話をする彼らの声が異様に大きいのも、汗臭いのも、デブ眼鏡なのも、いつまでもファッションセンターしまむらのお母さんに買ってきてもらった服を着るのも、全ては精神障害の一種であるとされた。そしてアニメやゲームは精神疾患を治療する薬として医師から処方される事になった。


ここでおかしなことが起こり始める。
つまり、アニメやゲームが薬であるとされ、希少価値の高いそれを持っている事がステータスであるとされてしまったのだ。つまり、わざとオタクになり「精神疾患」として薬を処方され、その薬を持っている事を自慢しあう事となったのだ。元来収集欲の強いオタクのこと、この流れは当然であるといえる。「俺今日『エヴァンゲリオン』処方してもらったぜ」「ちぇっ俺なんかいつまでたっても『ジャングルの王者ターちゃん』だぜ。早くガンダムとかエヴァとか処方してもらいたいなぁ」などという会話が全国各地でなされる事になった。
そしてもう一つ誤算がおこった。なぜオタクのデブは許されてデブがデブなのはなんで許されないのか、という問題提起がデブ側からなされたのだ。同じような訴えかけはサブカルからも、非モテからもなされた。「オタク」という障害者が数百万単位で発生することで、良きにつけ悪しきにつけ、「弱者」の構造が白日の下に晒されたことも大きかった。杉村太蔵首相はこの声に応え、サブカルも非モテも同じように障害者とした。もちろん、デブも、メガネも、チビもデカも、ロストジェネレーションも。ありとあらゆる事が障害であるとされ、大東亜共和国に住む人のほとんどが「障害者」となった。そして、障害者であることはたいした意味を持たないようになった。大東亜共和国の人々は、自分がどれだけ重篤な障害を持っているかを自慢するようになった。「俺なんかデブ五級でサブカル7級、メガネ2級だぜ」といった具合に。
そして私達は「普通」になっていく。

*1:当時の一般的な考えでは、オタクよりDQNの方がずっと生産性が高いとされた。