古田ラジオの日記「Welcome To Madchester」

フリーライター・婚活ライター・婚活アナリスト、古田ラジオのブログです。

ロスジェネ論壇がロストしていること


http://d.hatena.ne.jp/north2015/20080915/1221456975
http://d.hatena.ne.jp/north2015/20080917/1221581525
http://d.hatena.ne.jp/north2015/20080920/1221846525


それは「セイウンスカイこそ最強である」という事です。
「ポッセ」発行の論壇誌が高いとかいう話、ポッセといえば、史上最強の2冠馬であるセイウンスカイの祖父*1の事だと私は思っていたので、論壇ゲームがうんたらとか言われてもよく意味が分からりませんでした。セイウンスカイは3歳時に京都大賞典勝ったし、菊花賞勝った時は当時の世界レコードだったので、私の中では史上最強の2冠馬である事は論を待ちません。だからセイウンスカイなりそのの産駒のためならその祖父に850円でも5000円でも払えばいいというのが私の最初の感想です。

セイウンスカイ - Wikipedia


このままだと「セイウンスカイ思い出話」のエントリになってしまうので、本題に入りますが、今回書きたい内容は以下の通りです。
POSSEは「商業出版」ではなく「同人誌」である
・同人誌で850円というのはそれほど高い価格設定ではない
・が、それを差し引いてもトラバ先のエントリは圧倒的に正しい
・そもそも「論壇」にそんな甲斐性はとうの昔にないのではないか


なお、republic1963さんはマスコミワナビーですが、マスコミの中の人ではないので、認識違いがあればご指摘いただけると助かります。

  • POSSEは「商業出版」ではなく「同人誌」である

単純に言って、恐らくPOSSEは商業出版ではなく同人誌であると私は思います。ここでいう商業出版というのは取次を通して全国の書店ないしamazonで買う事ができるという意味です。そういったものではない雑誌をここでは同人誌と呼びます。同人誌という呼び方がいかにも素人くさくて嫌ということであれば、インディーズマガジン等と呼び変えていただいても構いません。
POSSEは一般の書店には置いていませんし、amazonでも買えません。これはつまりトーハンなりニッパンなどの流通を通していないということではないでしょうか。雑誌コードなりISBNコードなりも振られていないようですし。
逆に「ロスジェネ」であるとか「フリーターズフリー」に関しては、出版社が出した商業出版だと言えます。これはCDにおけるメジャー/インディーみたいなものなので、純粋に流通経路のみの問題です。ただ、メジャー作品ではなく、インディーズだと。そこだけご理解いただければ。
これはまるで、セイウンスカイが傍流のハイペリオン系でありながら、良血馬のキングヘイロースペシャルウィークと激闘を繰り広げたようなもんです。

  • 同人誌で850円という価格設定は別に暴利をむさぼっているわけではない

R25」のような雑誌が無料なのはなぜでしょうか。
簡単に言うと、広告収入でペイしているからです。
そこで、あの内容の雑誌に広告はつくと思いますか?普通考えてつくことはないと思います。
ロスジェネ」などは144ページで1,200円というありえない価格設定でしたが、これにも広告は載っていません。

ということで、コストは自分達で払うしかありません。
ここでいうコストというのは基本的に「印刷代+原稿料」です。
そもそも、原稿料を発生させていること自体どうなんだとも思えますが、ここではそれは考えません。で、印刷代がいくらか、という事を考えてみると、128ページでポプルス*2で印刷した場合、B5*3だと1000部で215,010円かかります。「POSSE」中の編集部によらない原稿9つに関して10,000円ずつ原稿料が発生したと考えると、
215,010+90,000=305,010
つまりざっくり試算して、30万ちょっとのコストがかかったことになります。
これを1冊あたりに直すと、1冊あたり305円のコストです。
つまり、この試算ですと、
一冊あたりの利益は、850-305=545円です。
物凄く暴利をむさぼっているように思えます。半分以上利益なわけですから。
ところが、ここで大問題が発生します。何部を損益分岐点にするかということです。
そもそも、文章系同人誌というのは絶望的に売れません。あの「論壇」の一大イベントであるはずのゼロアカ道場の関門ですら文学フリマで500部売り合って競うわけです。
同人誌の場合、再販制度があるわけでは当然ないので、売れ残った分はすべて赤字です。刷った分全部売れればいいですが、売れないことも想定すると、勢い何部売れればペイできるかを考えます。
POSSEの想定の損益分岐点は何冊かというと、
305,010/545=559.7
つまり半分以上、560冊売れないとペイできない。これは結構ハードル高いように思えます。
これはまるで、西山牧場がシェリフズスターの産駒が全く活躍しないなかからセイウンスカイセイウンエリアという2頭のオープン馬を出したのと同じぐらい困難な事であるように思えます。

  • 850円が高くないことはさておき…

まぁそういう位置にある同人誌対して届ける範囲が…と言ってもあまり意味がないのではないだろうかと私は思うわけですが、それでもやはりnorth2015さんが言っているのは圧倒的に正しいと私は思います。「ロスジェネ」などもそうですが、ああいう書籍をフリーターの人が読んでなんの役に立つのか、というのがそもそも私にはどうしてもイメージできなくて、そんなことするぐらいなら、炊き出しするか、『ナニワ金融道』でもあげた方がよっぽど役に立つんじゃないかとかバカみたいに思います。そういう意味において、ある種の「論壇への箔付け」としてとして以上の意味を持たないというのもおっしゃる通りだと私は思います。ただ、「上がりとしての論壇誌」自体からしてどんどん潰れていっていて、そもそも、「論壇」にそんなに何人も「評論家」を雇う甲斐性はないように思えます。それを含めての「プチ論壇」だと思いますが、「ゴールとしての論壇誌」の屋台骨が揺らいでいる以上、「プチ論壇的な互助組織」にしてもけっこうヤバいんじゃないかと私は思います。
これはまるで、セイウンスカイの産駒が活躍しないというか種付け自体すくない事を笑っているうちはいいが、日高の馬産自体が地盤沈下していっている危惧を持つようなものですね。


最後に。この記事をかくためにいろいろ調べたんですが、「ロスジェネ」が10,000部出てたという事を知ってびっくりというかのけぞりました。
http://mainichi.jp/life/job/navi/
バンゲリングベイが実は結構売れてたようなものなんでしょうか…。

*1:ポッセ→シェリフズスターセイウンスカイ

*2:http://www.inv.co.jp/~popls/

*3:版形がわからないのでB5と仮定