古田ラジオの日記「Welcome To Madchester」

フリーライター・婚活ライター・婚活アナリスト、古田ラジオのブログです。

「非モテ」からはじめる男性学を読んだ

『「非モテ」からはじめる男性学』を読み終わりましたので感想でも。

=======サマリー=======

1:『一つ教えといてやろう君らのいる場所は我々はすでに三千年以上前に通過している』

2:登場人物の社会的地位について

3:結局三千年以上解決しない問題

4:非モテ解消のための方策

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1:『一つ教えといてやろう君らのいる場所は我々はすでに三千年以上前に通過している』

最初に結論から。烈海王にこんなことを言われるまでもなく、本書には非常に既視感のある内容が多い。具体的には、例えば、非モテ研(ぼくらの非モテ研究会。当事者による研究グループ)で集まった時後にご飯を食べてるという話が登場するが「それ俺らがいつもやってたやつじゃん」となるし、お互いの行為を俯瞰的に見て「横の笑い」を取っているという話も伊集院光の深夜帯ラジオやファミ通の読者コーナーのことを想起してしまうなど、本書内で語られるソリューションもどこかで見たことがあるようなものが多い(後ほど詳述)。

もちろん、こうした内容が学問的にまとめられた例はあまりないだろうし、車輪の再発見であっても「やらないよりはやったほうが良い」ので、それが即、本書の価値を下げるものではない。さらに「いじり」などの被害によってどのように非モテが生まれるか、そしてそれが女性への「女神化」や「一発逆転」に繋がり、どう「イタい行動(マイルドな表現)」となっていくかがモデル化されていた。非モテというのは「『モテないこと』を自分で決めた(もしくは決めさせられた)人」だともいえるが、その点は非常に面白かった。それでもやはりどこかで既視感のある内容が多かったのは事実である。

 

2:登場人物の社会的地位について

次に気になったのがこの非モテ研で当事者語りをしている人たちの社会的地位についてである。ここについての情報がほとんどなく、端的に言うと実際はともかく、私は「全員学生なんじゃないか」と思ってしまった。ここで問題になるのが「弱者男性」と「非モテ」というのが果たして同じなのかという問題で、本書では「弱者男性=非モテ」という前提でまとめられているように思えるが、10~15年ほど前の自分の感覚ではいわゆる「非モテ論壇」に集まっていたのは学生よりも社会人の方が多く、様々な社会階層・学歴の人がいたように記憶している。そのこともあり「(少なくとも当時は)弱者男性=非モテ」とは一概には言えないのではないかと思っているが、本書ではそこについての記載がなく、どういう人たちの考えなんだろうと思ってしまった。

 

3:結局三千年以上解決しない問題

本書で語られる非モテ解消のための手段についてなのだが、これが「女性に優しくする」「学校や職場以外でのコミュニティを創る」「趣味など他のことに打ち込む」ということなのだが、恐らく「論壇」や各種書籍で繰り返し言われてきたことでもあり、非モテ解消のためのソリューションとしては非常に弱いと思う。非モテ解消のための方策としてよく言われるのが恋愛工学に代表されるようなナンパテクニックなどを使って女性をゲットしていく方法。これを仮に脱非モテのカオスルートとする。一方で女性に優しくするなどの方法はいうなれば脱非モテにおけるロウルートのようなものだ。カオスルートはハラスメント行為や犯罪とも地続きであるが一方で実利を得やすい(とされている)。一方でロウルートは政治的「正しさ」は担保されているがが効果が非常に弱い。例えば非モテ研のようなコミュニティ活動の場合はせいぜい数十人が対象となるだろうし、女性に優しくするというような騎士道精神を発露させた場合、よりこじらせる可能性だってある。

非モテをめぐるロウとカオスの問題は烈海王的に言えば「我々はすでに三千年以上前に通過している」のだが、いまだに解決を見ていない。ロウかカオスか、どちらを選択するかは個々のオピニオンリーダー*1にゆだねられているが、その点でロウルートの「正しさ」ばかりが強調されている(「正しい」ことはほとんどの人がわかっている)本書については少し残念に思った。

 

4:非モテ解消のための方策

最後に、とはいえ非モテ解消のための方策について考えてみよう。それは恐らく「一発逆転」を女性に求めるのではなく、他のこと、さらにいえば仕事(学校ではなく)に求めることだ。ぶっちゃけて言えば、仕事でいい会社に入れば収入と社会資本が増えて女性とお付き合いする可能性も上がる。よく「収入に応じて結婚率も上がる」なんてことも言われるわけで、収入を上げるというのは有力な選択肢となるのではないだろうか*2。その意味で本書における参加者の社会的な地位(とその変遷)については何らかの記述がほしかったと思う。そして、この戦略を取った場合、失敗しても大してダメージは大きくない。最悪女性とお付き合いすることがなくても生活基盤は整えているわけで、一人の生活を楽しめばよく、複数の可能性を担保できる。

恐らく一番まずいのは誰かの有料noteに課金しちゃってわざわざ非モテ情報を手に入れちゃったりすることで、ロウ・カオスのルートに関わらず、「ドグマ(教義)としての非モテ」を受け入れてしまうことだろう。非モテをライフスタイルとして折り合いをつける。そのための方策が見つかる時はくるのだろうか。

 

*1:伝説のオウガバトルより

*2:それよりも問題はコミュニケーション能力が劣位でも高収入をえられる仕事が近年少なくなってきていること=本来コミュ力なんかいらない仕事にもコミュ力を求められることが増えていることだろう