古田ラジオの日記「Welcome To Madchester」

フリーライター・婚活ライター・婚活アナリスト、古田ラジオのブログです。

「婚活」って必要なの?

30代にもなると恋愛、なかんずく結婚について考える時もある。まったくもって非モテとか言っていた人間の発言とは思えないところである。だが、婚活、とは一体なんだろうか。いわゆる恋愛・結婚には「紹介型」と「開拓型」がある。その話をする前に、我々の人間関係について少し考えてみる。ほとんどの人間には人間関係の網の目の中に生きている。一番近いもので言えば親や兄弟、あとは親戚や友人、会社の同僚、大学の同級生などなど。こうした関係は大抵の場合その人の人生において、生まれたり、消えたり、また復活したり、という事を繰り返している。本エントリではこれをソーシャルグラフと呼ぶ。我々はソーシャルグラフの網の中を生きている。生まれてこのかた、ずっと山奥で一人で暮らしてきたというようなよほど奇特な人を除いて、グラフの質・量はともかくとして我々はソーシャルグラフの中に生きており、グラフ上にいない人間はモブのようなもので同じ時代に生きていようが、全く関係がない(もちろん、他の人にとっては私もまたモブなのはいうまでもない)。
「紹介型」とはいわばソーシャルグラフの延長線上に(恋愛・結婚)相手をみつけることだ。例えば、知り合いの紹介や社内恋愛、親同士の取り決め婚というのはその典型例である。
一方で、「開拓型」というのは新規開拓=飛び込み営業の営業マンのように、ソーシャルグラフ上に全く存在しない人間と恋愛関係になることだ。これは例えば出会い系サイトや結婚情報サービス、お見合いパーティなどサービスを指す。合コンやお見合いは両者の中間のようなサービスで、あくまでもソーシャルグラフ上の関係でありながら、その関係が極めて遠い(知り合いの知り合いの友人みたいな極めて薄い関係性しかない場合も多い)事がその特徴である*1


「紹介型」の利点は安心できるという事だ。よく人は「自然な流れで恋愛したい」などと恵那司のような事を言うが、その点、紹介型においては自分の人間関係の中から相手を選ぶので、極めて「自然」だし、相手の氏素性についてもある程度判明しているので「安心」できる。一見、「紹介型」にはデメリットが見当たらない。だが、「紹介型」の唯一最大の弱点は、相手が見つかるまでずっとソーシャルグラフをメンテナンスし続けなければならない、という事だ。例えば、あなたが30名ぐらいの営業部にいるとする。その半分の
15人が独身女性だとする。営業部に所属したばかりのあなたの彼女候補(笑)は15人。ときめきメモリアルもびっくりなハーレム状態である。だが、当然ながら歳を重ねるに従い、相手候補(笑)はすくなくなる。あなたが取りうる方法は2つ。一つは営業部以外の関係から相手を見つける事。もう一つは、残った候補(笑)を改めて恋愛対象として関わりをもつことだ。
つまり、「紹介型」においては相手が見つかるまでソーシャルグラフ上のアクティブな人間関係を増やし続ける必要があるのだ。たまに「男は歳をとった方がモテる」という人がいるが、その人は金さえあれば女はすぐついてくると考えているか、もしくはアクティブな人間関係を増やし続ける事ができる、と考えている人だ。ごく簡単にいえば、結婚適齢期を過ぎた人が「紹介型」で結婚するにはそれなりに工夫が必要である。


一方で「開拓型」の利点は全く見ず知らずの人と出会えるという事だ。だから、何らかの理由(例えば、離婚したとか、長期間海外にいたとか)でソーシャルグラフ上から相手を選べない、という人にとっては非常に都合がいい。だが、それがそのまま「開拓型」のデメリットにもなる。「開拓型」で出会った相手はどこの馬の骨かわからないのだ。これは大したことないようで物凄い困難を伴う。特に結婚、となった時には。ふた開けてみたら実は風俗狂いとか、そういう事がままありうるのだ。


婚活、という事をよくよく考えてみると、そこで問われているのは基本的に「開拓型」の問題である事に気がつく*2。結婚それ自体を否定しない限り、合コンや社内恋愛を否定する人はあまりいないからだ。だが、晩婚化が進む中で「紹介型」のみを頼って結婚しようとすることはリスクがある。よく「開拓型」の婚活に対して「したって結婚できないかもしれないじゃん」という人がいる。そういう人は、家や車を新規開拓で売る営業に「新規開拓したって売れないかもしれないじゃん」と言ってみればいいだろう。もちろん、どうやっても営業に向かない人や嫌いな人はいるだろう。だがそれと営業自体とはあまり関係がない。
つまり、婚活するかどうか、という事は大して問題ではない。新規開拓の営業をするべきかどうかなんて考えるだけナンセンスなのと同じだ。より重大な問題はそこまでして結婚する必要なんてあるのか、という事だろう。

*1:もちろんこれは一般論としてそういう場合が多いという話。

*2:「婚活」とはまさに「就活」の恋愛版であることに注意