「仕事するのにオフィスはいらない」を読んだ
佐々木俊尚氏の「仕事するのにオフィスはいらない」を読みました。
- 作者: 佐々木俊尚
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2009/07/16
- メディア: 新書
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趣旨としては、
・クラウドコンピューティングや無線LAN環境の整備によって自分の仕事のほとんどはPCやモバイルを使ってするようになる
・今後はそういうデジタル機器で武装したエリート層「ノマド(遊牧民)」が登場する。ノマドにとっては現在想定されているような意味でのオフィスは必要ない
というもの。全般的な話や細かいツールの使い方など、非常に面白い内容でした。
で、私は、主に自分のリアル仕事絡みで2点面白いと受けました。
一つ目は営業という仕事についてです。
「仕事するのにオフィスはいらない」に対する批判の一つとして、「こういう未来像は結局エリートにとってのものにしか過ぎない」というものがあります。だけど、私は、営業のような職種にとってこそ「ノマド化」の効果はあるのではないかと思いました。
通常の営業の仕事といえば、
A:出社→B:朝礼→1:業務処理→C:客先に移動→2:商談→D:帰社→F:夕礼→3:業務処理→E:帰宅
といったものです。このうちで営業の付加価値を生んでいるのは、2の商談のところだけ。営業が他の文系総合職と違うのは、基本的にオフィスにいても1円も生み出さないということです。
つまり、A〜Eの所をなくし、業務処理を社外の細切れの時間で実施できるようにするだけで、物凄く効率化できるんではないか(朝礼・夕礼なんて無駄の最たるものだ)。今まで、こういった会議や会社での業務処理は必要悪でした。だけど、技術の進展によって、そういったものが必要なくなることになるんではないかと思います。
もう一つは「仕事をするのにオフィスがいらなく」なった結果として広い意味でのOA機器というものに対しての認識が大きく変わるんではないかという事です。
私はOA機器売ってるわけですが、業務用のコピーとかプリンターとかFAXっていうものは基本的に「何百人が集合して一つの場所で仕事をする形でのオフィス」で使うことを前提としています。だからこそ業務用のコピー機というのは、家庭用のものよりも丈夫だし、サポート体制が充実しています(その代わり契約内容は複雑極まりない)。1台にコピー、FAX、プリンターと色々な機能があり、最近のコピー機は非常に高度になっていて、ほとんどパソコンと同じような機器になっています。ICカードでアクセス認証したりとか、JAVAを搭載してアプリ動かしたりしているわけです(ここで「既存の」OA機器販売業を営む人たちが脱落していっているわけだが)。だけど、「仕事をするのに必ずしもオフィスに集まらなくてもいい」ってなると、そういう業務用コピー機の需要は減るんではないでしょうか。スターバックスのようなサードプレイスに有料のコピーを置いてプリントができるようになったとして、その時必要なのは極めて単純な機能のコピー機・プリンターなのではないでしょうか。つまり、サードプレイスでICカードなんてナンセンスだし、セキュリティ上の問題で、機器内に画像ログを溜め込むのは当然嫌がられるわけだし…と考えると、単純な機能のコピー・プリンター(コピーできればいい、プリントできればいい)さえあればそれ以上、必要とされないのではと思います。
これはつまり、OA機器というのが(それなりに)高度な知識や提案力が必要な機器から、例えばUSBメモリや外付けHDDのような消耗品的な位置づけに変わるということなのではないでしょうか。
そんなこと夢想して非常に面白いと思いました。