古田ラジオの日記「Welcome To Madchester」

フリーライター・婚活ライター・婚活アナリスト、古田ラジオのブログです。

婚外子が増えても少子化対策にはならないよ、そんじゃーね

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20130514

色々言われていますが、このエントリが狡猾なところはあくまでも結婚制度の話を主眼にしており、少子化対策については「臭わす程度」にとどめてあること。実は『クリルタイ7.0』ではステファン・ラピーさんというフランスの方にインタビューを一度しており、その際にフランスの事実婚(民事連帯契約=PACS)について聞いております。

(※以下の引用はあくまでも個人としての見解です。)

 ―: 日本では、フランスの結婚観やカップル文化を先進的なものとして取り扱う人が凄く多いんですね。特に、出生率を上げるための手段としてPACS婚を導入しろという人は結構多い。だけど、それは本当なのか?という疑問をもちまして。

ステファン(S): いや、PACSは本来なら宗教の元でない結婚制度のための処置です。P A C S があるのは、主に「真剣に付き合っているし、一緒に住んでいるけど、結婚に興味がない/出来ない」人たちのためのものです。(中略)P A C S の基本的なメリットは、長続きする関係の場合は、結婚と同等の税金のメリットがあるけど、それを破棄するのは結婚ほど手間じゃないし、「離婚」にならない。一方でデメリットはその間に発生した負債なども場合によっては負担しなければいけないことですね。フランスの資産共有制度をナメちゃいけない( 笑)。

 

―: 日本の場合だと、基本的にその、結婚しないと子供ができないという前提があるからなんですね。だから、そのハードルをとにかく下げたいということで、PACSがクローズアップされています。

S: フランスでは結婚は簡単ですが、離婚が難しいんです。PACSは破棄もできるし、手当ももらえる。PACSから結婚に移行もできるんですね。フランス人から見ると、日本の結婚制度はPACSとそれほど違わないですよ。単純に日本の出生率が低いのは、子供をもっと作れば手当がもらえるっていう制度にしてないからだけだと思うんですが。三人以上子供を作ったらさらに税金も安くなるし、手当もあげますっていう。日本にそれがあれば積極的にもう一人子供がほしいとなると思いますが。

(『奇刊クリルタイ7.0』より一部抜粋。強調部分は私の手による)

奇刊クリルタイ7.0

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 http://anond.hatelabo.jp/20130514155517

こちらの増田で書かれている通り、婚外子率30%を超えるドイツが日本と大して変わらない出世率という事実もあり、実のところ婚外子の増加割合と出生率の関係っていうのはよくわかんないっていうのが結論なんじゃなかろうか。

http://www.esri.go.jp/jp/prj/hou/hou012/hou12b.pdf

ちなみに、こちらの資料によると、ドイツとフランスの出生率の差はフランスにおける「第3子以降の出生支援」の差があるとの事。インタビューの内容と合致しています。で、そういう状況なんだから、ましてやその制度を日本に導入して出生率が上向くかどうかっていうのはまったくもってわからない。

というわけで、結局、少子化問題を解決するには手当の増加(ないし環境の充実)以外の方法っていうのはあんまないんじゃないかな、むしろ、正直言って「少子化問題の解決」はIT業界における「クラウド」、広告業界における「ソーシャル」のごとく、婚活業界において色んな金を引き出したりするための一種のマジックワードなので、この手の話題は基本、疑ってかかるのが吉ではないかと思います。ただし、婚外子を認めようが、「昭和の家族」に戻ろうが、それによって出生率が上がるかどうかは誰にもわかりません。ただ、どちらが「私(とその家族)」にとって住みよいのかは自明であり、それに基づいてどちらを支持するか決めるべきなのではないのでしょうか。

 

そんじゃーね(また来世)